短歌の話(8/21〜27)

岡井隆『鉄の蜜蜂』を読んだ。岡井は難しいイメージが強かったけれど、皇室行事に関する連作などはゴシップ感覚でたのしく読めた。

明日着るモーニング提げて352までうす暗きカーペット踏む/「東京駅ホテルに泊り皇居の年賀の儀に列するまで、即事」

ルームカードかざせば開く扉の奥二〇一六年の新闇がある/

坂下門警めてゐる四五人に頭を下げて過ぐ昼明かければ/「両陛下へのご進講即事」

 こういう自分とはとうてい縁のない人の生活が垣間見える歌は読んでいておもしろい。

 

・読みたくて読めていなかった角川「短歌」2023年4月〜6月号に掲載の乾遥香の月評をようやく読めた。引かれている歌について、どれも特徴的な名詞が使われているわけでもないのに、輪郭のくっきりしている歌が多くて、乾らしい選歌と思う。下記の文が印象に残った。

思いを直接書くか、比喩などで遠回しに見せるかは作歌スタイルの範疇だが、現実をモチーフに置き換え自分から離せば離すほど、作歌に責任を取るのは難しくなるのではないか。

 

・24日(木)、紀伊国屋新宿本店で開催された青松輝第一歌集『4』刊行記念トークイベントに参加してきた。最初に短歌の朗読があり、そのあと30分程度のフリートーク。印象に残ったのは、梨やカワセミ、光といった、使うだけで”それっぽく”みせられるモチーフが嫌い、という話。あと、歌集に収録されている「motion picture」という連作が賞に応募することを意識して作った連作だとも話していて、こんどもう一度時間をかけて読んでみようと思う。